時を刻む石垣:伊平屋島「田名城(ウッカーグスク)」に秘められた神聖な物語

沖縄本島からフェリーで約1時間20分、神々の島として知られる伊平屋島。その大自然の中に、まるで時が止まったかのようにひっそりと佇む古代の城の跡、田名城(ウッカーグスク)があることを知っていますか?

今回は、地元の人々から「コシアテ森」と呼ばれるこの聖なる場所へ、太古の謎を解き明かす神聖なこの城跡の情報をお届けします。

頂上への秘密の道!いざ、古代の要塞へ

田名集落の背後にそびえる後岳(くしだけ)。この山の麓にある田名神社から、いよいよグスクへの道が始まります。鬱蒼とした木々に囲まれた坂道を登っていくと、まるで古代の知恵が宿ったかのような仕掛けが見えてきます。

なんと、この道には、敵の侵入を阻むための「横矢(おうや)」をかけるための小さな平場が、10ヶ所以上も配置されているんです!これは、現代の知恵をもってしても驚くべき、琉球列島でも珍しい防御戦術。石積みは単なる壁ではなく、古代の人々が築き上げた、精密な知恵の結晶なんです。

圧倒的な存在感!空にそびえる城壁の謎

ついに、標高180mの山頂に到着!そこには、天と地を結ぶようにそびえる、壮大な石積みの城壁跡が姿を現します。伊平屋島のグスクの中で最大規模を誇るこの城は、まさに威風堂々。

特に、出入口を守るために築かれた高さ2mを超える頑丈な石積みは圧巻だったことでしょう。敵を威嚇し、守備側が上から攻撃するための足場にもなっていたというから、その戦略性の高さに感心させられます。

そして、この場所から見える景色は、まさに絶景!田名集落や水田が一望でき、かつての見張り台(物見)が、この壮大な景色を眺めながら島の平和を守っていたんだな…とロマンが溢れてきます。

頂上に眠る聖地と、時を超えた宝物

城壁に囲まれた頂上には、「城嶽御イベ」と呼ばれる御嶽(うたき)があります。こここそが、この場所が「コシアテ森」と呼ばれる所以。神が宿る、最も神聖な場所なのです。

さらに驚くべきことに、この聖なる平場からは、遠く中国からもたらされた青磁や、琉球弧で作られたカムィヤキといった、当時の生活を物語る貴重な遺物が発見されています。

これは、この場所が単なる要塞ではなく、13世紀から15世紀にかけて、遠く離れた地域とも交流を持っていた、活気ある生活の中心地だったことが伺えるのではないでしょうか。

伝説の城?歴史書にない物語

田名城には、公式な歴史書には残されていない、たくさんの伝承が語り継がれています。

  • 「大和(本州)から来た人が築いた城だ」
  • 「田名城と伊是名は、金丸(後の尚円王)の繋がり」
  • 「ここで石工の技術を学んだ職人が、今帰仁城の設計に関わった」

…など、この城にまつわる話は尽きません。

伊平屋島には、田名城の他にも、標高300m近くの賀陽山に築かれた賀陽(がよう)グスクや、沿岸部の岩礁上にあるヤヘーグスクなど、個性豊かなグスク群があります。それぞれ異なる場所に築かれながらも、共通の「古代の設計思想」を持っているというから、伊平屋島のグスクを巡る旅は、まさに壮大な歴史ミステリーの解明なのです。

伊平屋島の石積みは、かつてそこで生きた人々の知恵と、神々を崇める精神が結晶化したもの。静かに佇む城壁は、今も私たちに、太古の歴史を語りかけています。あなたも、この神秘的な城を訪れて、古代の囁きに耳を傾けてみませんか?